「ゴムの時間」と呼ばれるベトナムの時間感覚——遅刻文化の深層
「Giờ cao su(ゴムの時間)」——ベトナム語には「伸び縮みする時間」という表現がある。約束の時間に遅れることへの意識が日本と根本的に異なる背景と、仕事での現実的な対応を探る。
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「14時に会議を設定した。14時15分になっても相手が来ない。電話すると『もうすぐ着きます』と言われ、来たのは14時30分だった」——ベトナムで仕事をする日本人からよく聞く体験談だ。
ベトナム語に「Giờ cao su(ジョー・カオ・スー)」という表現がある。「ゴムの時間」——伸び縮みする、つまり時間が曖昧だという意味だ。自虐的にも使われるが、現実の一側面を言い当てている。
時間感覚の違いの背景
なぜ「時間に対してルーズ」という傾向があるのか——一般論として、農業社会では「自然のリズム」に合わせた時間感覚が発達しやすく、産業社会の「時計通りの効率化」への適応は後から来ることが多い。
また、ベトナムの交通(バイク主体・渋滞)は時間通りの移動が難しい環境だ。「渋滞で遅れた」は正当な理由として広く受け入れられており、「何があっても時間通りに来い」という圧力が日本より低い。
仕事では変わりつつある
「ゴムの時間」は若い世代・外資系企業の文化では変化している。特に日系・欧米系企業で働くベトナム人の間では、「定時に来る・会議に遅れない」という習慣が根付いてきている。
「時間を守る=プロフェッショナリズム」という価値観の移植は、企業文化を通じて進行中だ。
プライベートは別の基準
仕事とプライベートで時間感覚が変わるケースも多い。「職場では時間通りに来るが、友人との食事は30分遅れても普通」という人が珍しくない。
これは日本でも「仕事の締め切りには厳しいが、プライベートは融通が利く」という感覚に通じるところもある——程度の差はあるが。
外国人として付き合う方法
ベトナム在住で「時間を守ってほしい」という場合の現実的な対応として、「重要な会議は余裕を持った設定にする」「30分前集合を前提に時間を伝える」「遅れた場合の影響を事前に説明する」といった工夫が報告されている。
「文化が違う」と怒るより「どう合わせるか」を考えた方が、消耗しない。そして「時間に厳しい自分」を相手に見せ続けることで、「この人との約束は守った方がいい」という認識が生まれることがある。