ベトナム戦争の歴史と在住外国人の視点
ホーチミンに住むと戦争博物館や戦跡が日常の隣にある。ベトナム戦争の歴史を現地で感じながら、在住外国人がどう向き合っているかを考えます。
この記事の日本円換算は、1VND≒0.006円(10,000VND≒60円)で計算しています(2026年4月時点)。
ホーチミン市3区に戦争証跡博物館(Bảo tàng Chứng tích Chiến tranh)がある。年間50万人以上が訪れる定番観光地だが、在住者として初めて入館したとき、展示の重さに言葉を失う人は少なくない。
枯葉剤(エージェントオレンジ)の影響を受けた子どもたちの写真。ソンミ村虐殺事件(1968年)のドキュメント。捕虜収容所の再現展示。観光客向けに「和らげた」演出はなく、事実がそのまま並んでいる。
ベトナム側の呼称
ベトナム語では「アメリカ戦争(Chiến tranh Mỹ)」と呼ばれる。日本での呼称「ベトナム戦争」はアメリカ的な名付け方で、戦場になった側からの視点ではない。在住して初めてこの違いに気づく人が多い。
戦争が終わったのは1975年4月30日。「南北統一記念日」として現在も国民の祝日になっており、ホーチミン市中心部では毎年パレードが行われる。ベトナム人の同僚や友人と話すとき、この日付が彼らにとって持つ意味の重さを理解しておくと、会話の厚みが変わる。
クチトンネル——地下で戦った構造
ホーチミン市北西60kmにあるクチトンネル(Củ Chi Tunnels)は、南ベトナム解放民族戦線(Viet Cong)が掘った総延長250kmの地下網だ。現在は観光地として整備されており、実際に地下トンネルに入れる区間がある(最狭部は幅60cm、高さ80cm程度)。
入場料は15万VND(900円)。半日ツアーで行くのが一般的で、ホーチミン市中心部発のツアーが多数ある(1人25万〜40万VND=1,500〜2,400円程度)。在住者が一度は連れていく場所のひとつだが、閉所恐怖症の人には事前確認が必要だ。
在住外国人はどう受け取るか
アメリカ人在住者は博物館で明らかに複雑な表情をすることがある。日本人は「被害者でも加害者でもない」距離感から、比較的フラットに歴史として向き合える立場にある。一方で、日本もかつてベトナムに侵攻した歴史があり(1940〜45年)、その点はベトナム人の教科書にも記載がある事実として知っておく価値がある。
「この国に住む」という行為は、その国の記憶の中に自分を置くことでもある。表層の観光情報だけでなく、歴史の層を理解することで、在住生活の文脈が変わる。観光客のうちに来て「重かった」で終わらせるより、住みながら少しずつ読み解いていける環境がホーチミンにはある。