Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
文化・社会

ベトナムの干支に「うさぎ」はいない。代わりに「猫」がいる

ベトナムの十二支は中国・日本と微妙に異なる。卯年は猫年、丑年は水牛年。旧正月テトの文化と結びついた干支の世界観を、在住者の視点から紹介する。

2026-05-07
ベトナム干支テト旧正月文化

この記事の日本円換算は、1USD≒155円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(USD)の金額を基準にしてください。

「今年は何年?」とベトナム人に聞いたとき、返ってくる答えが日本人の予想と違うことがある。

ベトナムにも十二支がある。中国から伝来した干支の体系を使い、旧暦の正月(テト)を祝う。しかし、動物のラインナップが微妙に違う。最大の違いは「卯(うさぎ)」がいないことだ。ベトナムではうさぎの代わりに「猫(Mèo)」が入る。

なぜ猫なのか

理由には複数の説がある。最も有力なのは「発音の変化」説だ。中国語で卯年は「卯(mǎo)」と発音する。これがベトナム語に伝わる際に「Mèo(猫)」に音変化したという説だ。

もうひとつは「生活環境」説。ベトナムの農村部ではうさぎよりも猫の方が身近な動物であり、農業社会で穀物をネズミから守る猫の方が、暦の動物としてリアリティがあったという解釈だ。

どちらが正しいかは確定していないが、結果として「猫年」はベトナム文化に深く根づいた。猫年のテトには猫のイラストが街中を飾り、猫グッズが売れる。日本の年賀状にうさぎを描く年に、ベトナムでは猫を描いている。同じ文化圏にいるようで、動物が1匹違う。

ベトナムの十二支の全貌

ベトナムの十二支は以下の通りだ。日本・中国との違いを太字で示す。

順番ベトナム日本
1ネズミ(Chuột)子(ネズミ)
2水牛(Trâu)丑(牛)
3虎(Hổ)寅(虎)
4猫(Mèo)卯(うさぎ)
5龍(Rồng)辰(龍)
6蛇(Rắn)巳(蛇)
7馬(Ngựa)午(馬)
8山羊(Dê)未(羊)
9猿(Khỉ)申(猿)
10鶏(Gà)酉(鶏)
11犬(Chó)戌(犬)
12豚(Lợn)亥(猪)

牛が「水牛」なのは、ベトナムの水田農業で水牛が耕作に不可欠だった歴史を反映している。日本の「猪」がベトナムでは「豚」になるのも、家畜としての豚の方が生活実感に近いからだ。

干支は同じ中国起源でも、伝わった先の気候と農業と動物相で変形する。文化とは、そういうものだ。

テトと干支の結びつき

ベトナムの旧正月(テト・グエン・ダン、Tết Nguyên Đán)は、ベトナム最大の祝日だ。公式の休暇は5日間だが、実質的には前後1〜2週間の経済活動が緩やかになる。

テトの準備は旧暦の12月中旬から始まる。花市(ホアテト)が開かれ、黄色い梅の花(マイ)が南部で、桃の花(ダオ)が北部で飾られる。門松の代わりに竹の棒(ネウ)を立てる地域もある。

干支の動物は、テトの装飾に直結する。その年の動物をモチーフにした飾り、封筒(リーシー、お年玉の赤い封筒)、お菓子のパッケージが街にあふれる。龍年のテトは特に盛大で、龍の踊りが長く、花火の予算が増える傾向がある。龍はベトナムでも最も縁起のいい動物だ。

在住日本人が知っておくと便利なこと

テトの時期にベトナムにいる日本人が最も影響を受けるのは、「社会が止まる」ことだ。

レストラン、スーパー、銀行、役所——多くが1週間近く閉まる。家政婦やドライバーも帰省する。テト前の1週間は「テト渋滞」で交通が麻痺し、テト中は逆に街が空になる。ホーチミンの人口の3〜4割は地方出身者であり、テトには一斉に帰省する。

干支の話題は、ベトナム人との会話のきっかけになる。「日本ではうさぎなのに、ベトナムでは猫なんですね」と言うだけで会話が広がる。自分の干支をベトナム語で言えると、さらに喜ばれる。

お年玉(リーシー)の文化も日本と似ている。赤い封筒に現金を入れて渡す。金額は10万〜50万VND(約660〜3,300円)が一般的で、日本より控えめだ。ただし渡す相手の範囲が広く、取引先のスタッフや自宅の警備員にもリーシーを渡す習慣があるため、テト前に小額紙幣を多めに準備しておくと慌てずに済む。

同じ東アジアの旧正月文化圏にいながら、動物が違い、花が違い、渡す金額の感覚が違う。似ているからこそ、差分に気づけたとき面白い。


KAIスポット — みんなで作る現地情報

Kaigaijinでは、現地に住む日本人が実際に使っているスポット(レストラン・クリニック・美容室・不動産など)を国別に集めています。

ベトナムのKAIスポットを見る・情報を追加する

コメント

読み込み中...