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ベトナムの職場文化——年功序列・メンツ・マネジメントの現実

外資系企業や現地企業で働く在住外国人が直面するベトナムの職場文化。年功序列・メンツ重視・指示待ちの傾向とその背景、日本人マネージャーが陥りやすいパターンを解説します。

2026-04-22
ベトナム職場文化マネジメント外資系仕事

この記事の日本円換算は、1VND≒0.006円で計算しています(2026年4月時点)。

「はい、わかりました」と言ったのに、翌日になっても進んでいない。「何か問題がありましたか?」と聞くと「大丈夫です」と返ってくる。でも実際には大丈夫じゃなかった——ベトナムで働く日本人から、こういう話を聞く機会が多い。

これは能力の問題ではない。文化的な背景がある。

「ノー」と言えない構造

ベトナムの職場でもっとも外国人が戸惑うのは、問題が表面化するタイミングが遅いことだ。

ベトナムでは上司の指示に対して公の場で反論することは、「メンツをつぶす行為」と捉えられる。ミーティング中に「できません」「難しいです」と言うことは、自分と上司の両方の顔を傷つけることになる。だから「わかりました(Vâng)」と答えておく。

問題があるときも、直接言わずに回避するか、別の人を通して間接的に伝えようとする。欧米式の「フラットなフィードバック」は、まず機能しないと思っておいた方がいい。

年齢・役職の序列は明確

ベトナム語には相手の年齢や立場によって変わる一人称・二人称が20以上ある。年上には「anh(兄)」「chị(姉)」と呼びかけ、目上の人への敬意は言語の構造に組み込まれている。

職場でも同様で、上司の指示は黙って従うものとされる傾向がある。「なぜこのやり方でやるのか」を若手社員が上司に問うことは、場合によっては失礼とみなされる。外資系企業ではこの文化が薄まっているが、完全になくなるわけではない。

日本人マネージャーが「風通しのよい職場にしよう」と意気込んで来ても、最初は戸惑うことが多い。「意見を自由に言っていい」という場を作っても、ベトナム人スタッフがすぐに意見を言い始めることは少ない。信頼関係の構築と、「意見を言っても安全だ」という実績の積み重ねが必要だ。

個人主義と集団主義のはざま

ベトナムは儒教文化圏だが、集団主義の度合いは日本より弱いとされる。転職率が高く、給与アップのためのジョブホッピングは一般的だ。特に20〜30代の若手労働者は、1〜2年で転職することも珍しくない。

一方で、親族・友人ネットワークへの義理は強い。採用の決め手が能力よりも「知人の紹介かどうか」になる場面もある。外国人マネージャーがこの仕組みを理解せずに「能力主義で採用する」と宣言しても、実際の現場では機能しないことがある。

マネジメントで機能するアプローチ

ベトナムで長年マネジメントをしてきた日本人の間でよく言われるのは、「個別に話す時間を作ること」の重要性だ。グループミーティングでは出ない本音が、1対1の場では出やすい。

また、指示の与え方も重要だ。「〇〇をやっておいてください」よりも「〇〇を△日までに終わらせてほしい。途中で問題があればすぐ教えてください」と具体的な期限と相談窓口を示す方が、トラブルが減るという声が多い。

メンツを傷つけずにフィードバックするには、ほかのスタッフがいない場で話すことが基本だ。公の場での叱責は、たとえ正当な批判であっても関係を壊す可能性がある。


ベトナムの職場文化に「良い・悪い」はない。日本とは違う前提で動いているシステムだと理解した上で、どう機能させるかを考える——そこから始めると、一緒に働くベトナム人の仕事への誠実さや粘り強さが見えてくる。

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