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始業7時30分、昼休み90分——ベトナムの勤務時間が熱帯に合わせて設計されている

ベトナムのオフィスは日本より早く始まり、昼休みが長く、夕方に一気に人がいなくなる。この時間割が気候と生活に最適化されている構造と、日本企業とのずれを考える。

2026-09-19
働き方職場生活習慣ベトナム

この記事の日本円換算は、1USD≒161円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、USDまたは現地通貨(VND)の金額を基準にしてください。

ベトナムの会社で働き始めた日本人が最初に驚くのは、朝の早さです。8時始業の会社でも、7時半には人が揃っている。そして昼になると、オフィスの照明が落ちて、机に突っ伏す人と床にマットを敷く人が現れる。

夕方5時を回ると、駐車場のバイクが猛烈な勢いで消えていきます。

一日の形が違う

ベトナムの一般的な勤務時間は、朝が早く、昼休みが長く、終業も早い。企業によって幅はありますが、日本の「9時始業・1時間休憩・夜まで残業」とはかなり違う形をしています。

これは怠けているのでも勤勉なのでもなく、熱帯の気候に合わせた配分だと考えると腑に落ちます。一日の中で最も暑いのは正午から午後3時ごろ。この時間帯の生産性は、どうやっても下がる。

ならば、涼しい朝に集中して働き、暑い時間は休み、日が傾いてから再開する。農作業の時間割としては当然の設計で、それがオフィスワークに引き継がれています。

昼寝は制度に組み込まれている

昼休みに眠ることは、ベトナムでは私的なサボりではなく、標準的な行動です。会社によっては照明を落とし、休憩用のスペースを用意している。デスクの下に丸めたマットを常備し、昼になると引き出してキャスター椅子を脇に寄せる。ハンモックで休む習慣が職場に持ち込まれている例もあります。

睡眠研究の分野では、日中の短い睡眠が午後の認知機能を回復させることが繰り返し報告されています。ヒトの覚醒度は一日の中で二度落ちるという説もあり、昼過ぎの落ち込みに休息を合わせるのは理にかなっている。

日本の職場でこれをやると評価が下がりかねない。同じ行動が、社会によって「怠慢」にも「合理」にもなる。行動そのものより、それをどう解釈する枠組みがあるかの問題です。

定時退社の速度

終業時刻を過ぎたオフィスの空き方は、日本人には衝撃的です。残っている人がいない。

背景には複数の要因が考えられます。子どもの送り迎えの時間が固定されていること、家族での食事が重視されること、そして残業が常態化していないこと。

これに加えて、陰暦で決まる親族の命日のような予定が定期的に入ります。西暦のカレンダーには何も書かれていない日に、複数のメンバーが同時に早退することがある。

日系企業では、日本側の期待とのずれが摩擦になることがあります。夕方に依頼を出して翌朝までに返ってくると思っていたら、翌日の午前に着手される。これは怠慢ではなく、仕事の時間帯の定義が違うだけです。

対処としては、依頼を出す時間を朝に寄せること。ベトナム側の集中時間が朝に来ているなら、そこに合わせたほうが結果が出ます。

日本との時差も効く

ベトナムと日本には2時間の時差があり、ベトナムのほうが遅い。日本の朝9時はベトナムの朝7時。

日本本社が動き出す時間はベトナムの始業直前にあたり、日本の終業時刻はベトナムの午後3時ごろ。つまり、ベトナムの夕方は日本側が既に退勤している時間帯です。

この重なり方を理解すると、会議の設定が楽になります。両者が確実に稼働しているのは、ベトナム時間の午前中から午後2時ごろまで。ここに重要な意思決定を寄せると、往復が一日で完結します。

食事の時間も前倒し

勤務時間が前倒しなら、食事も前倒しになります。昼食は11時台から始まり、夕食も日本より早い時間帯に取る人が多い。

夜遅くまでやっている店がないわけではありませんが、家庭での食事は早め。会食を設定するときに日本の感覚で19時半にすると、相手が既に空腹を通り越していることがあります。18時前後を目安にすると、無理がありません。

朝食も同じ理屈で前倒しです。始業前の路上の低い椅子に座って麺をすする人の列は、6時台がピークになります。8時に出勤する感覚で7時半に店に寄ると、仕込みが終わりかけていることがある。

時間割は気候の翻訳である

労働時間の配分は、その土地の環境に対する社会の応答です。北欧が夏に長期休暇を取り、南欧が昼に長い休憩を挟むのと同じように、ベトナムの時間割は熱帯の一日をどう切り分けるかの答えになっている。

日本から来ると、最初は「早い」「長い」「短い」と感じます。数か月経つと、朝の涼しい時間の価値と、午後2時に外を歩くことの無謀さが体でわかってくる。

そのころには、昼休みにマットを敷いている同僚を見ても、何も思わなくなっているはずです。むしろ、自分も一枚買おうかと考えている。それがこの国の時間に馴染んだ合図です。

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