イギリスの医療・保険——NHS vs 民間保険、日本人が押さえておくべき使い方
イギリスのNHSの使い方とIHS料金、民間保険(BUPA・AXA PPP)との使い分けを解説。GP登録の方法・待ち時間問題・日本語対応クリニックの状況まで。ロンドン在住日本人向け医療情報。
この記事の日本円換算は、1GBP≒191円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(GBP)の金額を基準にしてください。
NHS(国民保健サービス)は「無料で医療が受けられる」という評判がある。実際、就労・学生ビザ保持者はIHSを支払えばNHSをほぼ無料で利用できる。ただし「無料」のラベルには注意が必要だ。
問題は待ち時間。GPの予約が取れるまで2〜3週間かかることも珍しくなく、専門医の紹介待ちを含めると数ヶ月になるケースもある。そのギャップをどう埋めるかが、イギリスで医療を使いこなすポイントになる。
IHS(Immigration Health Surcharge)
就労ビザ・学生ビザの申請時に支払う医療利用料。
| 対象 | 金額 |
|---|---|
| 成人(Student Visaを除く) | GBP 1,035/年 |
| 学生(Student Visa) | GBP 776/年 |
ビザ期間分を一括前払いするため、3年間の就労ビザなら成人1人でGBP 3,105(約59万円)を支払うことになる。家族帯同の場合は人数分がかかる。
IHSを支払うと、NHS加入者と同等の権利でNHSを利用できる(緊急処置・GP診療・入院等)。処方薬は処方1件あたりGBP 9.90の自己負担がある(2025年現在)。
NHSの使い方
Step 1: GPに登録する
NHSの入り口はGP(General Practitioner、かかりつけ医)だ。居住地域のGPクリニックを探し、患者登録を行う。
登録方法:
- NHS公式サイト(Find a GP)で居住地域のGPを検索
- クリニックに電話またはウェブフォームで登録申請
- フォーム記入・身分証提示後、登録完了
登録後、NHSカード(GMS1フォーム控え)が届く。受診時に名前・登録番号を使う。
Step 2: 予約を取る
体調が悪いとき、まずGPに連絡して予約を取る。人気のクリニックほど予約が取りにくい。2〜3週間先まで埋まっているケースも珍しくない。
緊急度に応じた選択肢:
- 命に関わる緊急事態: 999(救急車・警察・消防)
- 今日中に診てもらいたい: 111(NHS非緊急医療相談。24時間対応)
- 今週中でいい: GPに電話予約
NHSの緊急外来(A&E: Accident & Emergency)は命に関わる状態向け。軽傷・体調不良で行くと数時間待つことになる。
Step 3: 専門医へは紹介状が必要
皮膚科・整形外科・心療内科などの専門医(Specialist)への受診はGPの紹介状(Referral)が必要。紹介されてから予約が取れるまで数週間〜数ヶ月かかることがある。
民間保険(Private Health Insurance)
NHSの待ち時間問題を補うために民間保険に加入する人も多い。
主な保険会社
| 保険会社 | 特徴 |
|---|---|
| BUPA | イギリス最大の民間医療保険。プライベートクリニックとのネットワーク広い |
| AXA PPP Healthcare | 料金・補償のバランスが取れている |
| Vitality Health | 健康維持で割引が受けられる仕組みあり |
| Aviva | 大手保険会社グループ。セットプランが充実 |
費用感
個人の年齢・健康状態・補償内容によって差があるが、目安として:
- 30代・健康・基本プラン: GBP 60〜120/月
- 40〜50代・家族: GBP 200〜500/月以上
雇用主が福利厚生として提供している場合は、まずそちらを確認する。
NHSとの使い分け
| シチュエーション | おすすめ |
|---|---|
| 命に関わる緊急処置 | NHS(A&E) |
| 軽い体調不良・慢性疾患管理 | NHS(GP) |
| 早めに専門医に診てもらいたい | 民間保険 |
| 手術が必要だが待てない | 民間保険 |
| 出産・産婦人科 | NHSで対応可(産科は比較的待ち時間が少ない) |
薬局(Pharmacy)の活用
イギリスの薬局(Chemist)は、GPに行くほどでもない軽い症状に対してフォーマルな相談ができる。
Pharmacist First(薬剤師への直接相談): 2023年から試験的に導入。7つの軽症(耳鳴り・副鼻腔炎・目のかすみ等)についてはGPを通さず薬剤師に相談できる。
代表的な薬局チェーン:
- Boots: 最も店舗数が多い。処方箋受付・OTC医薬品充実
- Lloyds Pharmacy: 処方箋受付・オンライン薬局も展開
- Well Pharmacy: 地方にも展開
日本語対応クリニックの状況
ロンドンには日本語対応または日本人医師が在籍するクリニックが数か所ある。
- Japan Green Clinic(ロンドン): 日本語対応の一般内科。在英日本人に利用される
- 日本人学校の校医・医療相談: 子ども連れのファミリーには情報がある場合がある
デュッセルドルフほどの充実度はないが、ロンドンの日本人コミュニティ規模を考えると選択肢はある。在ロンドン日本国大使館のウェブサイトに医療機関リストが掲載されているので確認しておくといい。
歯科・眼科・精神科
NHSの歯科医師(NHS Dentist)は慢性的な不足状態にある。特に大都市圏では新患を受け付けているNHS歯科を見つけること自体が難しい。民間歯科(Private Dentist)は割高だが予約が取りやすい。
眼科の検査(Eye test)は18歳以上は原則有料(GBP 25〜40程度)。Boots Opticians等の光学チェーンで対応可能。
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