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お金・税金

MPF(強制性公積金):在住外国人が知るべき退職積立制度

香港で働くなら雇用主も従業員もMPFへの拠出が義務だ。制度の仕組み、拠出率、帰国時の受け取り方まで、外国人駐在員・現地採用向けに整理した。

2026-04-14
MPF強制性公積金香港年金駐在員現地採用

この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(HKD)の金額を基準にしてください。

香港で働き始めると、給与明細に「MPF」という控除項目が現れる。日本の厚生年金に相当する制度だが、仕組みは大きく異なる。いくら引かれているのか、どこに積み立てられているのか、帰国時に受け取れるのかを把握しておくと、後から慌てずに済む。

MPFとは何か

MPF(Mandatory Provident Fund、強制性公積金)は、香港政府が2000年に導入した民間の退職積立制度だ。

日本の厚生年金とは異なり、完全に個人口座で運用される積立型の制度だ。雇用主と従業員がそれぞれ拠出し、認可された民間の運用会社(MPFプロバイダー)が運用する。公的年金(国民年金)とは別の仕組みで、香港には日本のような国家管理の公的年金制度はない。

拠出率と計算方法

基本的な拠出率(2026年時点):

  • 従業員: 給与の5%
  • 雇用主: 給与の5%
  • 合計で給与の10%が積み立てられる

拠出の上限と下限:

  • 月給がHKD 7,100(約142,000円)以下の場合: 従業員拠出は免除(雇用主は義務)
  • 月給がHKD 30,000(約600,000円)以上の場合: 上限が適用され、拠出は最大HKD 1,500/月(約30,000円)(従業員・雇用主それぞれ)

つまり、月給HKD 30,000超の場合、実際の拠出率は5%より低くなる(HKD 1,500固定のため)。

計算例(月給HKD 50,000の場合):

  • 従業員拠出: HKD 1,500(上限適用)
  • 雇用主拠出: HKD 1,500(上限適用)
  • 月間積立合計: HKD 3,000

誰が対象か

  • 18〜64歳のすべての雇用者・被雇用者
  • 外国人・在住外国人も対象(就労ビザで働いている場合)
  • 例外: 自営業者(別途自主加入ルール)、就労60日以内の短期従業員、一部の特定職種

駐在員でも原則対象だが、例外がある。
日本など一部の国と香港の間には「二重保険料協定(Social Security Agreement)」は存在しないため、日本の厚生年金とMPFの両方を支払うケースになる可能性がある。ただし駐在員の場合は雇用主が全額負担するケースも多いため、会社のHRに確認が必要だ。

MPFの運用

拠出されたMPFは、雇用主が選んだMPFプロバイダー(AIA、HSBC MPF、Manulife等)が管理する。

従業員は、以下の点で選択権を持つ:

  • 従業員拠出分のファンド選択: 自分が払う5%分については、プロバイダーが提供するファンドの中から運用先を選べる
  • 従業員選択口座(Employee Choice Arrangement、ECA): 転職した場合など、過去の積立分を自分の選ぶプロバイダーに移転できる(自主加入部分に限る)

ファンドには株式型・債券型・保守型(元本保証なし)等があり、リスク許容度に応じて選択する。

帰国・退職時の受け取り

MPFは65歳で受け取り可能になる(早期受け取りは特定条件のみ)。

在住外国人が香港を離れる場合の特例:
香港を永久に離れる場合、「永久に香港を去る(Permanent Departure from HK)」を申請することで、65歳未満でもMPFの積立全額を引き出すことができる。

引き出し申請には以下が必要:

  • MPFプロバイダーへの申請書提出
  • 「永久離港」の宣言(偽りの申告は法的問題になる)
  • 書類審査後、通常数週間で支払い

帰国予定の外国人にとっては、実質的に「帰国時に受け取れる積立金」として機能する。数年間積み立てたMPFを帰国時に一括受領する在住外国人は多い。

MPFの税務上の扱い

拠出時: 従業員のMPF拠出分は、香港の給与税(Salaries Tax)において最大HKD 18,000/年(2024/2025課税年度)まで税控除が認められる。

受取時: 香港では原則としてMPFの受取額に課税されない。ただし日本帰国後に受け取った場合、日本の税務上の扱いを税理士に確認しておく方が安全だ。

よくある誤解

「短期滞在だからMPFは関係ない」は間違い
就労ビザで60日以上働くすべての人が対象。1年の契約社員も同様。短期でも確実に積み立てられており、帰国時に受け取る権利がある。

「雇用主が全部管理してくれる」とは限らない
プロバイダーの選定・ファンドの選択・転職時の移管手続きは、自分で確認・手続きが必要な部分がある。放置しているとパフォーマンスの悪いファンドに入り続けることになる。

実用的なアクション

  1. 入社時に確認: 会社のHRに自分のMPFプロバイダー名と口座番号を確認する
  2. ファンドを選択する: デフォルトのファンドが最適とは限らない。自分のリスク許容度に合わせてファンドを選ぶ
  3. 残高を定期確認: 各プロバイダーのオンラインポータルで年1〜2回は確認する
  4. 帰国が決まったら早めに申請準備: 「永久離港」の申請書類はプロバイダーに事前確認

香港の税金・お金の話については、香港の税金ガイド(給与税・利得税)MPFと日本の年金の調整も参考にしてほしい。

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