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家を借りたら30日以内に役所へ——韓国「住宅賃貸借申告制」が外国人の保証金を守る仕組み

韓国では保証金6千万ウォン超または月額家賃30万ウォン超の賃貸契約を結ぶと、30日以内に申告する義務がある。申告すると確定日付が自動で付く仕組みと、過料の計算方法を条文から読む。

2026-11-02
賃貸保証金確定日付外国人登録韓国

この記事の日本円換算は、100KRW≒11.8円で計算しています(2026年10月時点)。為替は変動するので、現地通貨(KRW)の金額を基準にしてください。

韓国で部屋を借りると、契約書にサインした日から30日の時計が動き始める。保証金が6千万KRW(約708万円)を超えるか、月額家賃が30万KRW(約35,400円)を超える契約なら、その賃貸借契約を役所に申告する義務がある。

日本にはない手続きだ。日本で部屋を借りて、家賃を役所に届け出た経験のある人はまずいない。

しかも申告の義務を負うのは、大家だけではない。借り手も含めた契約の当事者双方である。

条文が定める線引き

根拠は「不動産取引申告等に関する法律」の第6条の2だ。2020年の法改正で新設され、2021年に始まった制度で、韓国では「전월세 신고제(チョンウォルセ申告制)」と呼ばれる。

対象になる金額は同法の施行令第4条の3が決めている。保証金が6千万KRWを超える、または月額家賃が30万KRWを超える住宅賃貸借契約。どちらか一方を超えれば対象になる。

ソウルのワンルームで保証金1,000万KRW(約118万円)・月額家賃70万KRW(約82,600円)という契約は、保証金では引っかからないが家賃で引っかかる。都市部で外国人が借りる部屋の多くは、この線を越えると考えていい。

例外もある。契約を更新する際に、保証金も家賃も変えずに期間だけを延ばす場合は申告不要だ。

地域の限定もある。対象は特別自治市・特別自治道・市・区と、広域市と京畿道にある郡に限られる。言い換えると、広域市にも京畿道にも属さない地方の郡は対象外になる。ソウル・釜山・仁川・京畿道で暮らす限り、ほぼ全域が対象だと考えておけばいい。

30日以内に、二人で

申告は契約を結んだ日から30日以内に、住宅の所在地を管轄する役所へ「共同で」行うのが原則だ。

大家が申告を拒む場合には、借り手が単独で申告できる規定も条文に置かれている(第6条の2第3項)。申告を受けた役所は内容を確認して申告済証を発行する。借り手の側からも動ける設計になっている点は覚えておいていい。

契約内容が変わったときも同じだ。保証金や家賃を増減した場合、あるいは契約を解除した場合は、確定した日から30日以内に変更・解除の申告が必要になる。

申告すると確定日付が付く

この制度で外国人が一番知っておくべきなのは、罰則よりもこちらだ。

同法第6条の5第3項は、賃貸借契約書を添えて申告を受理した時点で、住宅賃貸借保護法上の「確定日付(확정일자)」が付与されたものとみなすと定めている。

確定日付は、韓国の賃貸で保証金を守るための要の手続きである。大家の家が競売にかけられたとき、借り手が保証金を優先して取り戻せるかどうかは、確定日付と住民登録上の転入の日付で決まる。この仕組みは保証金を守る方法やチョンセ・ウォルセの基本でも詳しく扱っている。

つまり申告制は、義務であると同時に、確定日付を取りに行く手間を一つ省いてくれる窓口でもある。契約書を添付して申告すれば、二つの手続きが一度で済む。

外国人の場合、転入申告との関係

もう一つ、条文には面白いつながりがある。

同法第6条の5第1項は、借り手が住民登録法に基づく転入申告をした場合、賃貸借の申告をしたものとみなすと定めている。

外国人には住民登録がない。代わりに出入国管理法第88条の2第2項が、外国人登録と滞在地変更申告は住民登録と転入申告に「代わる」と定めている。外国人は引っ越しから15日以内に滞在地変更の申告が必要で(同法第36条)、外国人登録証の裏面に新住所が記載される。

条文をつなげて読むと、外国人の滞在地変更申告も賃貸借申告として扱われうるように見える。ただし、窓口での実務がこの読み方どおりに運用されているかは確認できなかった。確定日付まで確実に押さえたいなら、契約書を添えて賃貸借申告を別途しておくのが安全だ。

過料はいくらか

申告を怠った場合の過料は、法律上は100万KRW(約118,000円)以下。具体的な金額は施行令の別表3が、遅延期間と「契約金額」の組み合わせで細かく決めている。

契約金額の計算方法が独特だ。保証金に、月額家賃の200倍を足す。先ほどの保証金1,000万KRW・月額家賃70万KRWの例なら、1,000万+(70万×200)=1億5,000万KRW(約1,770万円)が契約金額になる。

申告しなかった期間契約金額1億KRW未満1億〜3億KRW未満3億〜5億KRW未満5億KRW以上
3か月以下2万KRW(約2,360円)3万KRW(約3,540円)4万KRW(約4,720円)5万KRW(約5,900円)
3か月超〜6か月以下4万KRW(約4,720円)8万KRW(約9,440円)12万KRW(約14,160円)15万KRW(約17,700円)
6か月超〜1年以下6万KRW(約7,080円)10万KRW(約11,800円)16万KRW(約18,880円)20万KRW(約23,600円)
1年超〜2年以下8万KRW(約9,440円)13万KRW(約15,340円)20万KRW(約23,600円)25万KRW(約29,500円)
2年超、または共同申告を拒否10万KRW(約11,800円)15万KRW(約17,700円)25万KRW(約29,500円)30万KRW(約35,400円)

虚偽の申告は一律100万KRW(約118,000円)になる。

金額だけ見れば、罰としてはかなり軽い。遅れても数千円で済む設計になっている。

軽い罰金が示しているもの

重い罰で守らせる制度ではない、ということだ。

もし目的が取り締まりなら、過料はもっと重くしたはずだ。実際の設計は、遅れた人にも「今からでも出してほしい」と促す傾斜になっている。2年遅れても30万KRW(約35,400円)が上限なのは、申告されないことのほうが、遅れることより困るからだと読める。

では、国は何を欲しがっているのか。データである。

韓国の国土交通部は不動産の実取引価格を公開しており、売買だけでなく전월세の取引価格も検索できる。申告制が始まる前、賃貸の価格は不動産仲介業者と当事者の間にしか存在しなかった。申告制は、それを公共の統計に変える装置でもある。

これから部屋を探す人にとっても意味がある。近所の同じような部屋が実際にいくらで契約されたかを、仲介業者の言い値ではなく記録で確かめられる。物件探しの段階では、不動産会社の一覧と合わせて相場を見ておくと交渉の材料になる。

実務として

手順としては、契約書を受け取ったら30日以内に、住所地の住民センター(주민센터)か、国土交通部の不動産取引管理システムからオンラインで申告する。外国人登録番号でオンライン認証が通らない場合は、窓口のほうが確実だ。

契約書のコピーを添付すること。これで確定日付も同時に付く。引っ越しから15日以内の滞在地変更申告も、別の期限として並行して動いている。

制度の詳細は改定されうるので、実際の手続きの際は国土交通部と居住地の区役所の最新の案内を確認してほしい。

こういう見方もできる

賃貸の価格は、長いあいだ私的な情報だった。大家と借り手と仲介業者が知っていて、それ以外の人は知らない。

韓国の申告制は、その私的な数字を公共のものに変えた。しかもその代価として、借り手に確定日付という保護を差し出している。情報を出してもらう代わりに、保証金を守る手続きを肩代わりする。

取引の透明性を罰で強制するのではなく、交換で引き出す。過料の表が驚くほど細かく、驚くほど安いのは、この制度が「捕まえる」より「集める」ことを目的にしているからだと思う。

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