シンガポールで銀行口座を開設する——DBS・OCBC・UOBの選び方と手続きの全体像
シンガポールで銀行口座を開設するために必要な書類、ビザ別の条件、主要銀行の手数料・最低預入額、海外送金の方法までを解説。EP・S Pass・DP保持者向け。
この記事の日本円換算は、1SGD≒124円で計算しています(2026年3月時点)。為替は変動するので、現地通貨(SGD)の金額を基準にしてください。
シンガポールに着いて最初にやることの一つが、銀行口座の開設。給与の受け取り、家賃の支払い、日常の決済——全てが現地口座を起点に回る。
日本と違うのは、口座の維持にコストがかかること。最低預入額を下回ると毎月SGD 2〜5の手数料が発生する。どの銀行のどの口座を選ぶかで、この固定コストが変わる。
この記事では、シンガポールのローカル3大銀行(DBS・OCBC・UOB)を中心に、口座開設の条件・手数料・海外送金の方法まで、実務で必要な情報をまとめた。
主要銀行の特徴——ローカル3行 + 外資系
シンガポールの銀行は、大きく「ローカル銀行」と「外資系銀行」に分かれる。日本人を含む外国人が最初に口座を開くのは、ほぼローカル3行のいずれか。シンガポールの銀行情報はKAIスポットでもまとめて確認できる。
DBS銀行——シンガポール最大手
東南アジア最大の銀行。シンガポール国内のATM数・支店数ともにトップで、日常の利便性が高い。モバイルアプリ「DBS digibank」の使い勝手も良く、口座開設からPayNow登録、海外送金まで一つのアプリで完結する。
Employment Pass(EP)保持者であればオンラインで口座開設が可能。支店に行かなくていいのは、着任直後には大きなメリット。
DBS Remitという海外送金サービスがあり、日本を含む50以上の国・地域へ手数料無料(送金手数料・ケーブルチャージ無料)で送金できる。ただし、為替レートに銀行側のマークアップが含まれている点は知っておく必要がある。
OCBC銀行——2番手の安定感
シンガポール第2位の銀行。360 Accountは給与振込や公共料金の引き落とし等の条件を満たすと金利が上がる仕組みで、メインバンクとして使うほどメリットが出る設計。
オンラインでの海外送金(Overseas Funds Transfer)は、送金手数料・ケーブルチャージが無料になるプロモーションを実施していることがある(時期により変動)。
外国人のオンライン口座開設にも対応しており、DBS同様にデジタル完結が可能。
UOB銀行——3番手、堅実な選択肢
シンガポール第3位。UOB One Accountは条件を満たせば金利が上がるタイプの口座で、DBS MultiplierやOCBC 360と似た設計。
注意点として、外国人のオンライン口座開設には対応していないケースがある。支店での手続きが必要になる場合は、平日の日中に時間を確保しておくこと。
外資系銀行——HSBC
HSBCはEveryday Global Accountというマルチカレンシー口座を提供している。複数通貨を1つの口座で管理でき、海外出張や旅行が多い人には便利。
最低預入額はSGD 2,000(約25万円)で、下回るとSGD 5/月の手数料が発生する。ローカル3行と比べるとやや高め。開設から6ヶ月以内に解約するとSGD 50の手数料がかかる点も要注意。
日系銀行は個人口座に対応していない
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行はいずれもシンガポールに拠点があるが、法人向けが中心。個人の普通預金口座は基本的に開設できない。「日系銀行で口座を作ろう」と考えている人は、ローカル銀行を選ぶことになる。
口座開設の条件——ビザ別に整理する
シンガポールで銀行口座を開設するには、合法的な滞在資格が必要。ビザの種類によって条件が異なる。
Employment Pass(EP)/ S Pass保持者
最もスムーズに口座開設できるパターン。DBS・OCBC・UOBいずれも対応しており、オンライン申請も可能(UOBは支店手続きが必要な場合あり)。
必要書類:
- パスポート(原本)
- Employment Pass / S Passカード、またはIn-Principle Approval(IPA)レター
- シンガポールの住所を証明する書類(賃貸契約書、公共料金の請求書等)
IPAレター(パスの発行前に届く承認通知)でも申請できる銀行が多い。着任前にIPAレターが届いたら、到着後すぐに口座開設の手続きに入れる。
Dependant's Pass(DP)保持者
EP/S Pass保持者の配偶者・子供が取得するDP。口座開設は可能だが、銀行によっては追加書類(配偶者のEPのコピー等)を求められることがある。
Student Pass保持者
学生ビザでも口座開設は可能。ただし口座の種類が制限される場合がある。学校からの在学証明書が必要になるケースが多い。
ビザなし(観光ビザ / 非居住者)
就労ビザや長期滞在ビザがなくても口座開設は不可能ではないが、条件が厳しい。DBSの場合、非居住者の最低預入額はSGD 350,000(約4,340万円)。UOBはSGD 100,000(約1,240万円)。実質的に富裕層向けのサービスになる。
口座の種類——何を選べばいいか
普通預金口座(Savings Account)
日常利用のメイン口座。給与受取、PayNow、公共料金の引き落とし等に使う。シンガポール生活ではまずこれを開設する。
各銀行の代表的な口座:
- DBS My Account — 最低預入額なし。口座維持手数料なし(紙の明細を受け取る場合はSGD 2/月)。とりあえず口座が必要な人に向いている
- DBS Multiplier — 最低預入額SGD 3,000(約37万円)。下回るとSGD 5/月。給与振込+クレカ利用等の条件で金利が上がる
- OCBC 360 Account — 最低預入額SGD 3,000(約37万円)。下回るとSGD 2/月。給与振込・保険・投資等の条件で金利上乗せ
- OCBC Statement Savings — 最低預入額SGD 1,000(約12万円)。下回るとSGD 2/月。シンプルな普通預金口座
- UOB One Account — 最低預入額SGD 1,000(約12万円)。下回るとSGD 5/月(オンライン開設の場合、最初の6ヶ月は手数料免除)
当座預金口座(Current Account)
小切手が使える口座。シンガポールでは家賃の支払いに小切手を求められることがある(減少傾向だが、まだ残っている)。普通預金口座と別に開設する。日常利用には普通預金口座で十分。
マルチカレンシー口座
SGD以外の通貨(USD、JPY、EUR等)を同一口座内で保有・管理できる口座。
- DBS My Account — マルチカレンシー機能が組み込まれており、追加口座の開設なしで複数通貨を保有できる
- HSBC Everyday Global Account — 最低預入額SGD 2,000(約25万円)。下回るとSGD 5/月。海外利用手数料無料のデビットカード付き
日本とシンガポールの間で頻繁に資金を移動する人や、複数国に出張する人にはマルチカレンシー口座が便利。
手数料・最低預入額のまとめ
| 銀行 | 口座名 | 最低預入額 | 維持手数料(下回った場合) |
|---|---|---|---|
| DBS | My Account | なし | なし |
| DBS | Multiplier | SGD 3,000(約37万円) | SGD 5/月 |
| OCBC | 360 Account | SGD 3,000(約37万円) | SGD 2/月 |
| OCBC | Statement Savings | SGD 1,000(約12万円) | SGD 2/月 |
| UOB | One Account | SGD 1,000(約12万円) | SGD 5/月 |
| HSBC | Everyday Global | SGD 2,000(約25万円) | SGD 5/月 |
最初の口座としては、DBS My Account(維持手数料なし)が無難。給与の受取口座としてメインで使うなら、DBS MultiplierやOCBC 360のような条件付き高金利口座を検討する価値がある。
海外送金——シンガポールから日本にお金を送る
銀行の海外送金サービス
シンガポールから日本への送金は、各銀行のオンラインバンキングから手続きできる。
DBS Remitが現状では最も手軽。日本を含む50以上の国・地域への送金で、送金手数料・ケーブルチャージが無料(終了時期の定めなし)。アプリから数分で手続きが完了し、多くの場合は当日中に着金する。
ただし「手数料無料」は送金手数料の話であって、為替レートには銀行のマークアップが含まれている。中間レート(ミッドマーケットレート)との差分が実質的なコスト。大きな金額を送る場合は、レートの差を確認してから判断したほうがいい。
OCBCもオンラインの海外送金(Overseas Funds Transfer)で送金手数料・ケーブルチャージ無料のプロモーションを行っていることがある。利用前に最新の条件を公式サイトで確認すること。
UOBの海外送金は、送金額の0.125%(最低SGD 10〜最大SGD 100)+ ケーブルチャージ + 中継銀行手数料がかかる。DBS・OCBCと比べると割高になりやすい。
送金サービス(フィンテック)
銀行送金以外の選択肢として、Wiseのような国際送金サービスがある。中間レート(マークアップなし)で送金でき、手数料も事前に確定する。銀行と比べると1回あたり数千円〜数万円の差になることが多い——月1回送金を続けると5年で49万円の差になる計算。
→ 自分の送金額で手数料を試算する(登録不要・無料)
シンガポールでWiseのアカウントを開設すれば、SGDの入金はPayNowやFASTで即座にできる。日本の銀行口座への着金も通常1〜2営業日。
大きな金額(数百万円以上)を一度に送る場合は、銀行送金とWise等のサービスでレートと手数料を比較してから判断するのが現実的。
オンラインバンキング・モバイルアプリ
PayNow——電話番号だけで送金できる
シンガポールの銀行口座を持っていれば使えるリアルタイム送金システム。相手の銀行口座番号を知らなくても、携帯電話番号かNRIC/FIN番号だけで即座に送金できる。
- 24時間365日、即時着金
- 個人間の送金手数料は無料
- QRコードでの支払いにも対応
- 飲食店・小売店での支払いにも使える
口座を開設したら、銀行のアプリからPayNowに登録しておくこと。シンガポールでは「PayNowで送って」が日常的な送金手段になっている。友人との割り勘、家賃の支払い、個人間の取引——現金よりPayNowのほうが主流。
FAST(Fast and Secure Transfers)
PayNowの基盤になっているシステム。銀行口座番号を使った即時送金で、こちらも24時間365日対応。PayNowに登録していない相手への送金はFASTを使う。
PayNowとFASTの違い:
- PayNow — 電話番号・NRIC/FIN・QRコードで送金。相手の口座番号を知らなくてもOK
- FAST — 銀行口座番号を指定して送金。PayNow非登録の相手に送るときに使う
どちらも無料、即時。日本のように「振込手数料」がかかる感覚はない。
GIRO——自動引き落とし
公共料金(電気・ガス・水道)、保険料、クレジットカードの支払い等を自動引き落としにするシステム。日本の口座振替に相当する。銀行のアプリまたは支店で設定可能。
注意点・Tips
CRS(共通報告基準)——口座情報は日本に共有される
シンガポールと日本はCRS(Common Reporting Standard)に参加している。シンガポールの銀行で口座を開設すると、口座残高や利息等の情報がシンガポール税務当局(IRAS)を通じて日本の国税庁に自動的に報告される。
「海外口座だから日本にバレない」ということはない。日本の確定申告で海外資産の申告が必要な場合(国外財産調書等)は、正しく申告すること。
口座の放置に注意
一定期間取引がない口座は「休眠口座(Dormant Account)」扱いになり、再開に手続きが必要になる。シンガポールを離れた後も口座を維持する場合は、定期的に少額の取引を入れておくのが無難。
Non-Resident口座の制限
シンガポールを離れてビザが失効した場合、口座がNon-Resident扱いに変更されることがある。Non-Resident口座は最低預入額が大幅に上がり(銀行によりSGD 100,000〜350,000)、使い勝手が変わる。帰国前に銀行に確認しておくこと。
開設後にやること
- PayNowに登録 — 携帯電話番号をリンクさせる
- デビットカードを有効化 — ATM引き出しと店舗決済に使う
- GIRO設定 — 公共料金やクレジットカードの自動引き落とし
- モバイルアプリのインストール — DBS digibank、OCBC Digital、UOB TMRW等
- 海外送金の設定 — 日本の口座を送金先として登録しておく
シンガポールの銀行口座は、開設自体は難しくない。EPやS Passがあれば、オンラインで申請して数日で使い始められる。最初の口座はDBS My Account(維持手数料なし)を開設して、生活が落ち着いてからメインバンクを決めるのが現実的な流れ。
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