シンガポールの税金ガイド——日本との二重課税はどう処理するか
シンガポール居住者の所得税率と確定申告の流れ、日本の非居住者になった後の課税関係を解説。日星租税条約がない中でどう対応するか、CPFの外国人への適用外まで。
この記事の日本円換算は、1SGD≒124円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(SGD)の金額を基準にしてください。
「シンガポールは税金が安い」という話は聞いたことがあるかもしれない。実際、最高税率は22%(2024年から24%に改定)と、日本の最高税率55%と比べてかなり低い。ただし、日本との二重課税をどう処理するかは別の話で、きちんと把握しておかないと申告漏れや過払いが起きる。
シンガポールの所得税率(居住者)
シンガポールの個人所得税は累進課税。以下は2024年課税年度(2023年所得)の税率。
| 課税所得(SGD) | 税率 |
|---|---|
| 0〜20,000 | 0% |
| 20,001〜30,000 | 2% |
| 30,001〜40,000 | 3.5% |
| 40,001〜80,000 | 7% |
| 80,001〜120,000 | 11.5% |
| 120,001〜160,000 | 15% |
| 160,001〜200,000 | 18% |
| 200,001〜240,000 | 19% |
| 240,001〜280,000 | 19.5% |
| 280,001〜320,000 | 20% |
| 320,001以上 | 22%(2024年から24%) |
月給SGD 8,000(約99万円)の場合、年収SGD 96,000。概算で実効税率は8〜10%程度。日本の累進課税と比べると確かに低い水準。
「居住者」の判定——183日ルール
シンガポールでは、課税年度(1月〜12月)内にシンガポールに183日以上滞在すると「居住者(Tax Resident)」として扱われる。居住者は上記の累進税率が適用される。
183日未満の場合は「非居住者(Non-Resident)」扱いとなり、雇用所得には原則15%の一律課税(または居住者税率のどちらか高い方)が適用される。
つまり、年の途中でシンガポールに来た1年目は、183日を超えるかどうかが重要な分岐点になる。
日本との二重課税——租税条約がない
重要な前提として、日本とシンガポールの間には租税条約が締結されていない。日本はアメリカ・イギリス・フランス・タイ・マレーシアなど多くの国と租税条約を結んでいるが、シンガポールは例外的に未締結。
では二重課税はどうなるか。
日本の非居住者になってからの課税
日本に海外転出届を出して「非居住者」になると、日本での課税対象は国内源泉所得のみになる。
- 課税される: 日本国内の不動産収入、日本の会社から受け取る給与(一部)、日本国内の預貯金の利息(源泉徴収済み)
- 課税されない: シンガポールの勤務先から受け取る給与(日本での勤務分を除く)
シンガポールで勤務し、シンガポールの会社から給与を受け取る場合、その給与に対して日本は原則として課税しない。
外国税額控除の適用
日本に住民票が残っている(日本居住者のまま)でシンガポールで所得を得ている場合は、シンガポールで支払った税額を「外国税額控除」として日本の税額から差し引ける。ただし、この状況(日本居住者のままシンガポールで就労)は現実的に多くない。
駐在員で日本の会社の給与をそのまま受け取りつつシンガポール勤務する場合は、給与の源泉地が日本かシンガポールかによって取り扱いが変わる。会社の経理・税務担当者に確認することが推奨される。
確認しておくべきポイント
- 日本に不動産収入がある場合は、非居住者でも日本で確定申告が必要(移住前チェックリスト参照)
- 日本の証券口座(特定口座)は非居住者では維持できない証券会社が多い。出国前に処理が必要
- 銀行口座・クレジットカードの非居住者扱いについては各金融機関に確認
CPF(中央積立基金)——外国人は対象外
シンガポール市民・永住権保持者が強制加入する年金積立制度「CPF(Central Provident Fund)」は、就労ビザ(EP・S Pass)保持の外国人には適用されない。
つまり、給与からCPFは天引きされない。一方で、日本の厚生年金も任意加入でなければ積み立てられない。
社会保障の「空白」が生じるため、シンガポール滞在中の老後資産形成は個人の判断で行う必要がある。
シンガポールでの確定申告——SingPassから提出
シンガポールの確定申告は、SingPassアカウントを通じてIRASのMyTax Portalからオンラインで完結する。
申告が必要な人
- 年間所得がSGD 22,000を超える場合
- 事業所得・不動産収入・賃金外収入がある場合
会社員(雇用所得のみ)の申告フロー
多くの会社員は会社がAIS(Auto-Inclusion Scheme)に登録しており、給与情報がIRASに自動送信されている。この場合、3月〜4月の申告期間中にMyTax Portalにログインすると、給与情報がプレ入力された状態で確認・提出できる。
追加の控除(寄付・医療費など)がなければ、提出は10〜15分程度で完了する。
申告期限
| 申告方法 | 期限 |
|---|---|
| 電子申告(e-Filing) | 毎年4月18日 |
| 紙申告 | 毎年4月15日 |
SingPassの取得
シンガポールでのオンライン行政手続きはほぼすべてSingPassを経由する。EPカード受け取り後、SingPassのウェブサイトかアプリから登録できる。
まとめ——税制は「有利」だが「手続きは要確認」
シンガポールの所得税率は日本と比べて低く、EPを取得して働く日本人にとって手取りが増えやすい環境がある。
ただし、租税条約がないため、日本側の課税関係(非居住者認定・不動産収入・証券口座の処理)は個別に対処が必要。渡航前に日本の税務処理を整理しておくことと、シンガポールでのSingPass・申告手続きを早めに把握しておくことが実務的な準備になる。
不明点は会計士・税理士への相談が確実。シンガポールには日系会計事務所が複数あり、日系会計事務所・税理士の一覧はKAIスポットで確認できる。
シンガポール移住前チェックリストでは、出国前に日本側でやることをまとめている。住民税・確定申告・年金の処理タイミングなど税務と関連する手続きも載せている。
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