マレーシアの税金ガイド——海外所得の扱い、日馬租税条約、MM2H保持者の税務
マレーシアの個人所得税率・確定申告の手順を解説。2022年以降の海外所得課税変更の影響、日本との租税条約、TIN取得とe-Filingの流れまで。
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マレーシアの税制は長らく「海外所得が非課税」という点で、移住先として税務面の優位性があった。
その前提が2022年から一部変わった。完全に非課税ではなくなっており、「昔のルールのまま」で動いていると思わぬ税務リスクを抱えることになる。現在の実際のルールを確認しておく必要がある。
マレーシアの個人所得税率(居住者)
マレーシアの個人所得税は累進課税。居住者(暦年に182日以上マレーシアに滞在)には以下の税率が適用される。
| 課税所得(MYR) | 税率 |
|---|---|
| 0〜5,000 | 0% |
| 5,001〜20,000 | 1% |
| 20,001〜35,000 | 3% |
| 35,001〜50,000 | 8% |
| 50,001〜70,000 | 13% |
| 70,001〜100,000 | 21% |
| 100,001〜400,000 | 24% |
| 400,001〜600,000 | 25% |
| 600,001〜2,000,000 | 26% |
| 2,000,001以上 | 30% |
月給MYR 8,000(年収MYR 96,000)の場合、各種控除(個人控除MYR 9,000等)後の実効税率は概算で8〜12%程度。
海外所得の取り扱い——2022年の変更点
変更前(〜2021年)
マレーシア居住者が海外で稼いだ所得(マレーシア国外で生じた所得)は、マレーシアに持ち込んでも課税対象外だった。「テリトリアル課税(国内源泉所得のみ課税)」が原則。
変更後(2022年1月〜)
2022年以降、海外法人から受け取る配当所得・信託所得がマレーシア居住者に分配される場合、課税対象に含まれるようになった。
ただし、個人がマレーシアの国外源泉所得をマレーシアに送金(持ち込み)する場合についても、一部の事業所得に課税する方向性が示されていた。その後、個人の外国源泉所得で就労収入については引き続き非課税または軽減税率の扱いが継続されているが、制度の運用詳細は課税当局(LHDN: 国税局)の解釈によるところがある。
実務的な対応として:
- 海外法人から配当・事業分配を受けている場合は、税理士に個別確認が必要
- 就労ビザで勤務している場合(マレーシア勤務先からの給与)は通常通り申告対象
- DE Rantauで海外クライアントからの収入を得ている場合、現時点では非課税の運用がされているが、変更の可能性がある
日馬租税条約——二重課税をどう防ぐか
日本とマレーシアの間には**租税条約(二重課税防止条約)**が締結されている。
主要ポイント:
- 給与・人的役務所得: 勤務地国(マレーシア)で課税が原則。日本非居住者になっていれば日本では課税されない
- 不動産収入: 不動産所在地(日本)で課税
- 配当: 源泉地国で上限税率が設定(マレーシアから受け取る配当は15%以下)
- 年金: 居住地国(マレーシア)で課税
日馬租税条約により、マレーシアで支払った税額を日本側の確定申告で外国税額控除として申請できる(日本居住者で日本に確定申告が必要な場合)。
MM2Hビザ保持者の税務上の扱い
MM2Hは就労ビザではないため、マレーシアでの給与収入は原則として発生しない。
MM2Hビザ保持者の税務的な特徴:
- マレーシア国内に所得がない場合は申告義務が生じないケースが多い
- 日本の年金・資産運用収入をマレーシアで生活費に充てている場合、「海外所得の持ち込み」の取り扱いが問題になる可能性がある
- マレーシア国内で賃貸収入・投資収益がある場合は申告が必要
重要: MM2H保持者の税務については、制度変更の影響を受けやすい。マレーシアの日系税理士・会計事務所への相談を推奨する。
TIN(マレーシア納税者識別番号)の取得
マレーシアで所得が発生する場合、LHDN(Lembaga Hasil Dalam Negeri、国税局)のTINが必要。
取得方法
オンライン登録(e-Daftar)またはLHDNの地方支局窓口で申請できる。
e-Daftarでの登録手順:
- LHDN公式サイト(hasil.gov.my)にアクセス
- e-Daftar でパスポート番号・個人情報を登録
- 登録後、TINが発行される
窓口での申請:
- パスポート(原本)
- ビザのコピー
- 現住所証明(賃貸契約書等)
確定申告(e-Filing)——毎年4〜5月が申告期間
マレーシアの確定申告(Individual Income Tax Return)は、毎年4月30日(e-Filingは5月15日)が期限。
e-Filingの手順
- LHDN公式サイトのe-Filingシステムにログイン(TINとパスワード)
- 申告書(BE Form: 給与所得者 / B Form: 事業所得者)を選択
- 給与・その他収入・控除を入力
- 税額計算・提出
- 追納がある場合はオンラインバンキングで支払い
主な控除項目(参考)
| 控除項目 | 控除額(目安) |
|---|---|
| 個人基礎控除 | MYR 9,000 |
| 医療費(親・自分) | MYR 8,000まで |
| 教育費(自己投資) | MYR 7,000まで |
| 育児費用(6歳以下) | MYR 3,000まで |
| 生命保険・EPF拠出 | MYR 7,000まで |
| SSPN(教育信託)拠出 | MYR 8,000まで |
外国人(居住者)も個人基礎控除は受けられる。EPFへの拠出は通常外国人は対象外。
日本側の申告義務
マレーシアに移住して日本に海外転出届を出した場合(日本の非居住者)、日本での課税は国内源泉所得のみ。
チェックポイント:
- 日本に不動産収入・利子・配当等がある場合は、非居住者でも日本での確定申告が必要
- 日本の証券口座(非居住者は維持できない証券会社が多い)は出国前に処理
- 日本の住民税は「1月1日ルール」があり、年の途中で移住する場合は転出タイミングで課税額が変わる
詳細はマレーシア移住前チェックリストで確認できる。
まとめ
マレーシアの税制は以前と比べると「海外所得完全非課税」ではなくなっており、2022年以降の変更の影響は事業所得・配当等に及ぶ。就労収入の課税率は東南アジアの中でも低水準であることは変わらない。
実務的な準備:
- TINを早めに取得する(就労開始後に申告が必要になる前に)
- 海外からの収入の種類を整理する(配当・事業収益・年金等は税務リスクの確認が必要)
- 日馬租税条約の適用を確認する(二重課税を防ぐための書類準備)
- マレーシアの日系税理士・会計士への相談(特にMM2H・事業収益がある場合)
マレーシアの銀行口座開設ガイドでは現地口座の開設手順を、マレーシア移住前チェックリストでは日本側の手続きを整理している。
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