海外在住者の年金——任意加入・脱退一時金・老齢年金の受け取り方を整理
海外転出後の国民年金の選択肢を解説。任意加入のメリットデメリット、脱退一時金の対象者、老齢年金の海外口座受け取り手続き、社会保障協定のある国での扱いをまとめます。
30代で海外に出た人が「年金、どうするんだろう」と考え始めるのは大抵40代に入ってから。20代・30代のうちは優先度が低く見えるが、加入期間は後から増やせない。一度整理しておく価値はある。
海外転出後の国民年金の立ち位置
日本の国民年金は、原則として日本国内に住所がある20〜60歳の人が加入義務を持つ。海外に転出して住民票を除票した時点で、加入義務は消える。
ただし選択肢がある。義務がないからといって何も考えなくていいわけではない。
選択肢1: 任意加入
海外在住中も国民年金に任意で加入し続けることができる。
加入できる条件:
- 20歳以上65歳未満の日本国籍を持つ人
- 日本の国内に住所を持たない(海外在住)こと
保険料: 日本国内の国民年金と同じ。2025年度は月16,980円(毎年度改定)。最新の金額は日本年金機構の公式サイトで確認してほしい。
支払い方法: 日本の銀行口座から引き落とし(海外からでも可能。Wiseでの送金後に日本口座から引き落とし設定する方法を使う人も多い)
任意加入のメリット
受給資格の取得・強化: 老齢基礎年金の受給には原則10年以上の加入期間が必要(2017年9月以降)。任意加入でこの期間を補える。
年金額の増加: 加入月数が多いほど将来の年金額が増える。満額受給には480ヶ月(40年)の加入が必要。
20代で5〜10年間海外に出ていると、その期間は「未納」扱いになる。この穴を埋める手段として任意加入がある。
任意加入のデメリット
将来の回収見通しの不確実性: 年金制度の将来に不確実性があることは事実。月16,980円を何年支払って何年で回収できるか、という計算は人それぞれ。
海外での生活費から毎月の負担: 日本円での支払いが必要なため、円安のとき(現地通貨が高いとき)は実質的な負担が減るが、円高のときは増える。
選択肢2: 脱退一時金
これは外国籍の人向けの制度。日本国籍を持つ人は原則として脱退一時金を受け取ることができない。
外国籍の配偶者等が日本で加入していた場合は対象になりうる。詳細は日本年金機構(nenkin.go.jp)で確認してほしい。
選択肢3: 何もしない(放置)
加入義務がなくなれば、何もしなければ保険料は発生しない。この期間は「未加入」として扱われ、将来の年金額には反映されない。
ただし過去の厚生年金・国民年金の加入期間は消えない。帰国後に再加入することもできる。
10年以上の加入期間があれば65歳から老齢基礎年金を受給できる(金額は加入期間に比例)。
老齢年金の海外口座への受け取り
日本年金機構に海外住所と海外銀行口座を届け出ることで、年金を海外の口座に直接振り込んでもらえる。
手続き先: 日本年金機構(最寄りの年金事務所、または在外公館経由も可能)
必要書類: 年金受給権者支払一時停止等申出書、海外への口座振込の申出書等(手続き書類は日本年金機構の公式サイトで確認)
海外口座への振込は2ヶ月ごとの振込になる(国内と同様)。手数料として「国際電信送金手数料」が控除される場合がある。
社会保障協定(二重加入防止)
日本が締結している社会保障協定のある国では、日本と現地の両方で年金保険料を支払う「二重加入」を防ぐ仕組みがある。
協定締結国の例(2025年現在):
- ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、フランス、ベルギー、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデン
これらの国で就労している場合、どちらの国で年金に加入するかのルールが協定で定められている。一般的に5年以内の派遣は派遣元国の制度に加入し続ける(適用証明書が必要)。
一方でシンガポール・タイ・UAE等とは協定がない。そのため日本からの派遣者が現地のCPF(シンガポール)やSSO(タイ)に加入しなければならないケースがある。
最新の協定締結国リストと手続き方法は日本年金機構の公式サイト(nenkin.go.jp)で確認できる。在外公館でも問い合わせに対応している。
まとめ: どう判断するか
| ケース | 推奨選択肢 |
|---|---|
| 受給資格(10年)に未達 | 任意加入を検討する価値あり |
| すでに10〜20年加入済みで長期海外予定 | コストと将来の年金額を計算して検討 |
| 外国籍 | 脱退一時金の選択肢もある |
| 帰国予定が不明確 | 帰国後に改めて判断。加入期間は後から増やせないことを念頭に |
年金の判断は個人の状況(加入年数・海外滞在予定期間・資産状況・帰国予定)によって変わる。迷ったら日本年金機構の「ねんきんダイヤル」または在外公館に相談するのが確実。
関連記事